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「大人」と書いて「たいじん」と読む

前回からの続き・・・

前述のような社長だから
「見せしめ的」に叱られる可能性が高いなー。
良くても「中西君、もっとリップサービスしてあげなさい」ってなるんだろうなー。
と、陰鬱な気持ちで、社長室に立っていた。

さっそく、
数十億円の年商を一代で築き上げた機械メーカー会長が、怒涛のごとく、クレームを並べる。

本告社長は、うん、うん、なるほど、、と、全部聞いていた。

ひと通り聞き終えた本告社長は、このように話はじめた。
「いくつか、確認させてください」

「セミナー自体に、お客様(機械メーカーの見込み客)は、たくさん来ていますか?」
会長「はい、来ています」

「中西のセミナーの内容に、お客様は満足されていますか?」
会長「はい、お客様は満足しています。だから、この中西が、当社の機械を買えば売上が上がる、と言えば・・・・」

「セミナー後の追客で、機械が思ったよう売れない。そうゆうことですか?」
会長「はい、1回の開催で最低1社は契約したい。だから、この中西が言えば・・・」

「御社は、機械をたくさん売りたい。そうゆうことですね」
会長「そうです、その通りです。だから、この中西が・・・」

「なるほど、、わかりました」
「問題点は、御社の営業マンの力が弱いことです」
「当社が、御社の営業力を上げるために、営業マン研修をしましょう。
あと500万円ほど、出してもらえれば大丈夫です。研修は中西の上司○○がやります。
その線で、話をすすめてゆきましょう。営業力の強化というのはですね・・・・・
問題は根本的に解決しなければなりません。」

この返事を聞いて、機械メーカーの会長が、
口をあんぐりパクパクさせていた光景を、今でも覚えている。
(これほどお金を払っているのに、まだ払えというのか。。)

え?
クレームを言いに来たお客様に、さらに売りつけるつもりか!?
なんて人だ。
器がでかいのか、何も考えてないのか、
自社の会社のことしか考えてないというか、資本主義の権化と言うか、、
図太い、無神経、面の皮が厚い、臆面の無い、、どう表現したらよいのか。
すら、わからない。
自分の想像をはるかに超えた「度量の大きさ」を感じました。

事実を整理したうえで、相手の土俵に攻め込むことで、
クレームがクレームでなくなった。
本告社長の提案通り、営業研修の仕事も依頼された。
・・・私の上司もイヤイヤ行ったので、研修は数回で終わったらしいけど。。

当時、私は、26歳くらい。
さすが「船井幸雄」が、後継者に指名した人である。
百戦錬磨、いくつもの修羅場をくぐり抜けてきた「大人」の
途方もない「太さ」「大きさ」を感じる出来事でした。
大人と書いて「たいじん=度量のある人」とも読む。そうゆう人でした。

それに、
大事なことが、もうひとつ。
手抜きや、故意じゃない限り、
「自社のスタッフを、クレーム相手にさらすようなことをしてはいけない」
私は、社長によって守られた。

このとき、もしも私が、
「会社の売上を守るためだ」と謝罪させられていたら・・・。
あるいは、年間数千万円の売上を、自分の主義主張のために飛ばしてしまっていたら・・・
私は、今頃、どんな「大人」になっていただろうか?

とても大切なことを教えてもらったと思います。
いざというとき、肝心なときの「肝の据わり方」「自社のスタッフを守ること」こそ、
リーダーに大切なことです。半端じゃなかった。

この一件を、間近で見ただけで、
私は、本告社長をずーっと、尊敬している。

本告社長の本を、スペースに限りある書棚に残しているのは、
そうゆう「途方もない大人のデカさ、太さ」を忘れないため。である。


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