カカア天下と、空っ風。。上州名物
「●●、これじゃ、ダメだろー!!」
社長を呼び捨てにして、バシッとダメ出しするのは、
社長のお母さま。
クリーニング会社のご支援先でのひとコマ。
夕方、工場の仕事を終えて、事務所に顔を出す。
いつも肩にタオルを巻いている。
全力で仕事してきた感が、全身から沸き立つ。
髪は、短髪。チーター(水前寺清子)のような。
「なに、言ってんだ!!これはこうゆう意味でやってんだよ!」
息子である社長も、負けずにやり返す。
目の前で、数分間、激しい言葉が飛び交う。
「そうかい、じゃあもう、好きにしな!」
この親子バトルは、
いつも決まって、お母さまの、この言葉で終わる。
驚くことが、いくつかある。
この言葉を発したあとは、まったく何もなかったかのように
ごく普通の会話に戻る。
あれだけ罵倒しあっていたのに、お互い、ジトジトあとを引かない。
カラッとして、今までの喧嘩が、嘘のような平常に戻る。
そして、
言いたいことを言って
「好きにしな!」と言ったあとは、本当に、好きにさせる。
息子も、母親の言うことを、少し勘案しながら、施策を決めている。
最後に、
暴風雨のような親子は、バトル中も、そばにいる私を、絶対に巻き込まない。
「ねえ、中西さん」とか「中西さんは、どう思う」とか、
「だいたい、アンタがついていながら・・・」とか、一切ない。
仲裁の必要なく、完結させる。
まして、1対1を、2対1にしよう・・なんて気は毛頭ない。
私には「すみませんねー」と言いながら、やりあっている。
場所は、群馬。
「上州名物・かかあ天下と空っ風」という有名な言葉がある。
養蚕で栄えた群馬では、勤勉で働き者の女性が多く、発言権も強かった。
からっ風とは、激しく、乾いた「赤城おろし」。
吹き荒れるのは日中の一時で、夕暮れには、止んでしまう。そして晴天をもたらす。
まさに、この言葉の通り、上州名物の親子喧嘩だった。
お母さまの訃報。
同じ地域にある、ご支援先の葬儀社さまから、
ご連絡いただき、知ることとなりました。
ご冥福をお祈りします。
もう、この素敵な「上州名物」を目にすることはできない。
でも、私たちの胸のなかに、学ばせていただいたことが、生き続けている。